改正の要点
長引く景気の低迷から失業率の増加が続き雇用保険の財政を圧迫している。そのため雇用保険法を大きく見直し、給付日数や給付率など雇用保険法の健全な財政を維持するための改正が行われます。
主な変更事項
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(1) |
基本手当日額の給付率・上限額の引き下げ |
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(2) |
基本手当の所定給付日数が変わります |
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(3) |
60歳到達時賃金日額算定の特例が廃止されます。 |
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(4) |
高年齢雇用継続給付の支給要件及び給付率が変わります。 |
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(5) |
教育訓練給付金の制度が変更されます。 |
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(6) |
雇用保険料率が変わります。(平成17年4月1日以降) |
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(7) |
高年齢求職者給付金の額が変更されます。 |
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(8) |
育児、介護による休業、勤務時間短縮措置についての基本手当日額算定の特例が創設 |
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(9) |
就業手当が創設されます。 |
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(10) |
不正受給を行った場合の納付命令額等が変わります。</B> |
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(1) 基本手当日額の給付率・上限額の引き下げ
基本手当の給付率の上限・下限額が次の様になります。
年齢 |
賃金日額 |
給付率 |
60歳未満
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2,140円以上4,210円未満 |
80%
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4,210円以上12,220円以下 |
80%〜50%
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12,220円超 |
50%
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60歳以上65歳未満
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2,140円以上4,210円未満 |
80%
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4,210円以上10,950円以下 |
80%〜45%
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10,950円超 |
45%
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賃金日額、基本手当日額の上限額は次表の様になります。
年齢 |
賃金日額の上限額(基本手当日額の上限額) |
30歳未満
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13,160円(6,580円) |
30歳以上45歳未満
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14,620円(7,310円) |
45歳以上60歳未満
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16,080円(8,040円) |
60歳以上65歳未満
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15,580円(7,011円) |
基本手当日額・・・賃金日額×給付率
なお、賃金日額の下限額は2,140円(基本手当日額の下限額は1,712円)となります。
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(2)基本手当の所定給付日数が変わります。
・ |
短時間労働被保険者以外の一般被保険者と短時間労働被保険者の所定給付日数が一本化され、平成15年5月1日以後に離職した方に適用されます。
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・ |
離職の日の年齢が35歳〜44歳の方で被保険者であった期間が10年以上である特定受給資格者(※)の所定給付日数が延長され、平成15年5月1日以後に離職した方に適用されます。 |
〔法改正後の所定給付日数〕
(1) 特定受給資格者の場合((3)を除く)
被保険者であった期間 |
1年未満 |
1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 |
区分 |
30歳未満
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90日
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90日
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120日
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180日
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− |
30歳以上45歳未満
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90日
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180日
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210日
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240日
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35歳以上45歳未満 |
240日
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270日
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45歳以上60歳未満
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180日
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240日
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270日
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330日
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60歳以上65歳末滴
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150日
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180日
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210日
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240日 |
(2) 特定受給資格者以外の場合((3)を除く)
被保険者であった期間 |
1年未満 |
1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 |
区分 |
全 年 齢
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90日
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90日
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120日
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150日
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(3) 就職困難な者の場合
被保険者であった期間 |
1年未満 |
1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 |
区分 |
45歳未満
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150日
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300日
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45歳以上65歳未満
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360日
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※ 特定受給資格者……倒産、解雇等の理由により離職を余儀なくされた方のことをいいます。
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(3)60歳到達時賃金日額算定の特例が廃止されます。
60歳到達時以後に離職した方については、60歳到達時点の賃金日額と離職時の賃金日額を比較して高い方の賃金日額により基本手当日額を算定する特例が設けられていましたが、平成15年5月1日以後に60歳に到達した方については、この特例が廃止されます。
なお、平成15年4月30日以前に60歳に到達した方については、平成15年5月1日以後も60歳到達時の賃金日額算定の特例が適用されます。
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(4)高年齢雇用継続給付の支給要件及び給付率が変わります。
(1)高年齢雇用継続給付の賃金低下率要件、給付率の改正
支給要件の賃金低下率について15%超が25%超に、給付率について25%が15%となります。なお、これらの改正は、以下のとおり適用されます。
・ |
高年齢雇用継続基本給付金の支給要件、給付内容の見直し
60歳に到達した日(60歳到達時において被保険者であった期間が5年に満たない場合は、5年に達した日)が平成15年5月1日以後である被保険者について適用されます。 |
・ |
高年齢再就職給付金の支給要件、給付内容の見直し
・ |
平成15年5月1日以後に離職し、安定した職業に就くことにより被保険者となった方に適用されます。 |
・ |
平成15年4月30日以前に離職し、安定した職業に就くことにより被保険者となった方に対しては、旧賃金日額に基づき、改正前の支給要件、給付率、支給限度額及び下限額が適用されます。 |
・ |
平成15年4月30日以前に離職し、平成15年5月1日以後に安定した職業に就くことにより被保険者となった方に対しては、旧賃金日額に基づき、新たな支給要件、給付率、支給限度額及び下限額が適用されます。 |
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(2) 高年齢再就職給付金と再就職手当との併給調整
高年齢再就職給付金の支給を受けられる方が、同一の就職につき、再就職手当の支給を受けられる場合において、その方が再就職手当の支給を受けたときは高年齢再就職給付金は支給されず、高年齢再就職給付金の支給を受けたときは再就職手当は支給されません。この併給調整は、平成15年5月1日以後に安定した職業に就くことにより被保険者となった方に適用されます。
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(5)教育訓練給付金の制度が変更されます。
(1) 支給要件期間の要件を5年以上から3年以上となりました。
(2) 支給率、上限額の改正
支給額は、支給要件期間に応じ、以下のとおりとなります。但し、8千円以下の場合は支給されません。
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5年以上 |
教育訓練経費の40%に相当する額(20万円を限度) |
3年以上5年未満 |
教育訓練経費の20%に相当する額(10万円を限度) |
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・適用対象期間の延長
一般被保険者資格を喪失した日以後1年間のうちに妊娠、出産、育児、疾病、負傷等の理由により引き続き30日以上対象教育訓練の受講を開始できない日がある場合には、申請により教育訓練給付の対象となる期間にその受講を開始できない日数(最大3年まで)を加算できるようになりました
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(6)雇用保険料率が変わります。(平成17年4月1日以降)
雇用保険料率が平成17年4月1日から1,000分の2引き上げられます(平成17年3月31日までは現行のまま据え置かれます。)
事業の種類 |
平成17年
3月31日まで |
平成17年
4月1日以降 |
1
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2及び3以外の事業
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2
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・ |
土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、搾取若しくは伐採の事業その他農林の事業(園芸サービスの事業を除く。) |
・ |
動物の飼育又は水産動植物の採輔若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業(牛馬の育成、酪農、養鶏又は養豚の事業及び内水面養殖の事業は除く。) |
・ |
清酒の製造の事業 |
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3
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土木、建築その他工作物の建築、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその他準備の事業 |
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※()は被保険者の方が負担する部分です。一般保険料額表の廃止
一般保険料額表が廃止され、、被保険者の方が負担すべき雇用保険料額は、被保険者の方の賃金総額に上記の表のカツコ内の率を乗じて得た額となります。ただし、平成17年3月31日までの間は、引き続き一般保険料額表により計算していただくこともできます。
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(7)高年齢求職者給付金の額が変わります。
高年齢求職者給付金の給付内容が短時間労働被保険者である高年齢継続被保険者の給付内容に一本化され、平成15年5月1日以後に離職した方に適用されます。
一被保険者であった期間 |
1年未満 |
1年以上 |
高年齢求職者給付金の額
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基本手当日額の
30日分
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基本手当日額の
50日分
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(8)育児、介護による休業、勤務時間短縮措置についての基本手当日額算定の特例が創設
育児休業、介護休業又は育児・介護に伴う勤務時間短縮措置により賃金が喪失又は低下している期間中に倒産、解雇等の理由により離職した方については、休業開始前又は勤務時間短縮措置前の賃金日額により基本手当の日額を算定する特例が設けられます。
この特例は、平成15年5月1日以後に休業又は勤務時間短縮措置の適用が開始された方に適用されます。
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(9)就業手当が創設されます。
就業手当は、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上、かつ、45日以上である受給資格者が平成15年5月1日以後に再就職手当の支給対象とならない常用雇用等以外の形態で就業した場合において、次の要件を満たしたときに支給されます。
(1) |
待期が経過した後に就業したものであること。 |
(2) |
離職前の事業主(関連事業主を含む。)に再び雇用されたものでないこと。 |
(3) |
離職理由による給付制限を受けた場合に、待期満了後1カ月間については、安定所又は職業紹介事業者の紹介により再就職したこと。 |
(4) |
雇入れを約した事業主が安定所に求職の申込みをした日前にある場合において、その事業主に雇用されたものでないこと等。 |
支給額は基本手当日額の30%に相当する額(注)を就業日ごとに支給(就業手当の支給を受けた日については、基本手当を支給したものとみなされ、基本手当は支給されません。)し、原則として、失業の認定にあわせ、4週間に1回、前回の認定日から今回の認定日の前日までの各日について、「就業手当支給申請書」に、受給資格者証と就業した事実を証明する資料(給与明細書など)を添付して管轄安定所に申請します。
(注)1日当たりの支給額の上限は、1,833円(60歳以上65歳末滴は1,478円)で、
就業手当の支給対象のうち、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合には、就業手当は支給されませんが、早期再就職者支援基金事業による早期就業支援金(基本手当日額の40%に相当する額を就業日ごとに支給)が支給されます。
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